はじめに
本格的なトレーディングシステムとは、売買手法(ストラテジー)に資金管理(マネーマネジメント)によるポジションサイジングやポジション管理などを備えた統合的なシステムです。対して、個人投資家が運用するシステムは、中核となる売買手法(ストラテジー)に特化したシンプルなものがほとんどです。これは一見、非力なように思えますが、資金量や組織力に劣る個人投資家にとっては、逆に好都合な面もあります。
実際、システムトレード講座(実践編)の知識を活かして、各種メソッドを使いこなせば、シンプルなトレーディングシステムでも優位性のあるトレードが可能なことは、株式市場で生き残っている方なら理解できると思います。
だからといって、中核となるストラテジー以外の要素を無視してよいということではありません。資金管理(マネーマネジメント)によるポジションサイジングやポジション管理なしに、本格的なトレーディングシステムを構築・運用することはできません。
何らかの形で個人投資家もこれらの要素を組み入れたシステムを持つ必要があります。ただし、投資活動の全てをコンピュータ化した重装備なシステムは必要ありません。コンピュータの代わりに投資家自らがストラテジー以外の要素を補完することで、十分なポテンシャルを持ったシステムが構築できます。
それこそが個人投資家のためのトレーディングシステムに他なりません。軽装備で柔軟性のある本格的なトレーディングシステムは、他の投資家に対する更なる優位性をもたらしてくれるでしょう。
ストラテジー構築以外の要素が大事
他の金融商品と比べて、システムトレードによる株式投資を十分に優位なものとするには、ストラテジー構築以外に考慮すべき点が多数あります。事実、システムトレードを実践していくと、次のような疑問が出てきます。
- 銘柄の分散はどこまでやればいいのか…。
- 複数ストラテジーの組み合わせはどれが最適なのか…。
- トレードあたりの最適な投資額はいくらであるべきなのか…。
- 運用資金量に見合った投資額はいくらなのか…。
- リスクを犯してよい金額はいくらなのか…。
- そもそも年利に見合ったリスクとはどれくらいなのか…。
- 売買が交錯する多数の保有株式をどのように管理していけばよいのか…。
- 確定申告に必要な売買記録はどの程度まで用意しておけばいいのか…。
- 等々
これらの疑問のほとんどは資金管理(マネーマネジメント)によるポジションサイジングとポジション管理の問題に集約することができます。まさにストラテジー構築以外の要素になるわけですが、これらを一つ一つ解決していかなければなりません。
ちなみに、何故かバックテストをしている段階では、このような疑問は浮かんできません。やはり、所詮はバックテストだからでしょう。ドローダウンの恐怖は感じず、資産の乱高下にも無頓着です。どうしても、利回りの追求だけを考えて、安全性は二の次になってしまいます。加えて、単純なバックテストには株式売買に伴う制約は反映されません。売買は誤差なく必ず約定しますし、1株単位からの売買が可能です。
しかし、現実の投資では大きなドローダウンに恐怖して思考停止になります。資産の乱高下にも一喜一憂です。そして、資産を保全することの大切さと株式売買の制約にようやく気付くのです。
バックテストと現実の売買との一致性
いずれにしても、バックテストを含むストラテジーの開発や評価には、現実との一致性が大切になります。そのためには、株式売買制約とスリッページの反映、仮想売買による資産曲線が必要になってきます。その段階で初めて、ポジションの正確な管理を伴っての実運用が可能になるのです。
| ストラテジー開発 | --> | バックテスト・フォワードテスト |
+------------------+ +--------------------------------+
現実に即したストラテジーとテスト |
v
+----------------+ +--------------------+
| トレード実行 | ・・・・・ | 仮想売買 |
+----------------+ トレード +--------------------+
| 成績の近似 株式売買制約の反映
v
+----------------+
| ポジション管理 |
+----------------+
本格的な個人投資家向けトレーディングシステム
実践編では主にシステムトレードの基本的な理解とストラテジーの構築まで行ないましたが、それは言わば絵画の下絵を塗ったに過ぎない段階です。システムトレードという絵画を完成させるには、どうしてもストラテジー構築以外の要素へ目を向ける必要があるのです。
個人投資家のための本格的なトレーディングシステムへと、より精度と確度を高めていくのがシステムトレード講座(応用編)です。受講のメリットを以下にまとめておきます。
講座付きなのでトレーディングシステムを理解しながら構築できる
実践編と同様に講座を主体にしていますので、オンラインで講座を読み進めることでシステムトレードが実践的に理解できます。バックテストと現実の違いをなくすために行なう対策、仮想売買による資産曲線の作成、そして複数ストラテジーの組み合わせに至るまでサポートしています。
また、実践編ではストラテジー構築が主題だったために、各種メソッドの仕組み解説に重点が置かれていましたが、応用編では新しいトレードツールの提供と共に、具体的なストラテジー構築の例を一章を割いて解説しています。
トレーディングシステムが自動化できる
実践編ではDOSのコマンド入力で、各種メソッドを組み合わせてシステムトレードを行ないました。マウスを使った操作に慣れている人にとっては面倒そうに思えますが、DOSを使う利点は自動化の可能性にあります。DOSは一連のコマンドをバッチ化するだけで、かなりの部分まで自動化することができるのです。
つまり、取得株価データからシステムトレード用のデータに変換するための自動化や、ディール、フィルター、ストップメソッドを組み合わせたストラテジーのトレード自動化が可能になります。
本講座をベースに構築した実運用中のトレーディングシステムを例に挙げると、自動で株価データ取得を終えた後、システムトレードするために必要なコマンドはたったの1行(日付含めて17文字)だけです。これだけで、数百の銘柄を数種類のストラテジーで同時にトレードさせることができます。システムトレードが終了した後は、メール転送された売買指示に従って証券会社のウェブサイトに注文を入れるだけです。
応用編では上記例のレベルまでシステム化は行ないませんが、システム化を行なうための基本的なバッチ化の部分を解説していますので、後は各自の必要性に応じて高度なシステム化を進めていくことができるでしょう。
トレードあたりの最適投資額が分かる
1つのトレードにどれだけの金額を投資すればよいか。全ての投資家が一番悩むポイントでしょう。特に分散投資する場合には切実な問題です。その解答として、実践編では簡便な投資額の決定法を記しましたが、その投資額が最適かどうかは分かりませんでした。
投資はリスクとリターンのバランスです。トレードの投資額が大きすぎれば過剰なトレードで破産しますし、少なすぎれば一向に資金は増えず資産運用しているとは言えません。実際、トレード額の決定は資産の安全性と効率性のトレードオフになるため、簡単に答えが出てはきません。しかし、学術的な研究や先人の努力などにより、妥当な投資額決定のヒントはあります。
他の投資家を凌ぐには、優位性のあるストラテジーに加えて、トレード毎の合理的な投資額決定プロセスが必要です。つまり、ドローダウンを抑えながら、資産を効率的に最大化するためのマネーマネジメント(ポジションサイジング)が必要になります。当然、それは投資家の運用資金量に合わせて、動的に変化するものでなければなりません。
システムトレード講座(応用編)では1つの解として、リスク率モデルによる安全性とオプティマルfによる効率性を混合した「リスク連動型ポジションサイジング」を解説しています。
資金を考慮してバックテストできる
実践編では勝率とペイオフレシオ、プロフィットファクターによる指標でしかストラテジーの優位性を把握できませんでした。ストラテジー単体の性能を把握するには十分な指標ですが、トレーディングシステム全体の性能を把握するという意味では少々、力不足な感は否めません。結局のところ、トレーディングシステムがどれだけ稼いでいるのかという問いに答えるには、資産の増減を表す資産曲線が必要になるのです。
もちろん、バックテストによるトレードの売買ログ(売買シグナル)を表計算ソフト等で集計すればどのように資産が増えていくのかを実感することはできます。しかし、バックテストの売買ログを単に集計しただけでは、現実とはかけ離れた結果になる可能性があります。
例えば、単なる集計ではシステム運用開始時の資金量は無限にあるという前提になります。従って、システムが出す参入シグナルの全てに対応することができます。100銘柄の買いシグナルが出たら100銘柄の全てが買えるのです。これは現実的な話ではありません。実際にどれだけの株式を購入できるかは投資家の資金量に依存しますし、銘柄あたりに投じる金額も関係してきます。
高価なシステムトレーディングのソフトには大抵、資産曲線を算出できる機能が付いています。しかし、資金量が無限の前提で資産曲線を算出しているものもあります。当然、トレード成績も利回りもよくなります。しかし、それは株式市場の全銘柄を買える投資家のための幻想の資産曲線なのです。
下手に間違った資産曲線を算出すれば、トレーディングシステムの性能を誤解してしまうことになりかねません。システムの実力を正確に判断して、無理のない投資を行なうためには、現実に近い形での売買シミュレーションを行なう必要があるわけです。ただ、現実に近づけると言っても、全く同じにすることは不可能です。スリッページはどうしても避けられませんし、限りなく現実に合わせようと思ったら、それこそ学術的で複雑なシステムになってしまい、運用も維持も事実上、不可能です。
本講座の応用編では、現実の売買にほぼ合致する資産曲線の算出プログラムを用意しています。この資産曲線を検証することにより、トレーディングシステムの実力を正確に判断できます。
最適なストラテジーの組合せが分かる
銘柄の分散投資は単一ストラテジーでも可能です。1つの銘柄への投資額に制限を設けることで結果的には分散投資になるからです。1トレードあたりの投資額ルール(ポジションサイジング)さえ持っていれば、適度な銘柄分散はそれだけで他の投資家との優位差を作り出します。
ある程度のスキルがあるシステムトレーダーならば、この銘柄分散に辿り着くことは時間の問題です。つまり、システムトレーダー同士の優劣はなくなるわけです。しかし、ここに売買手法の分散という一段上の運用スタイルがあります。それぞれ特徴の異なる売買手法(ストラテジー)を組み合わせることで手法の分散を図る方法です。
手法分散投資は銘柄分散投資よりもレベルが高く、統計的な知識も必要で、構築の手間も掛かります。ただし、その苦労を補って余りある成果が得られることは確かです。あるトレーダーは複数ストラテジーによる安定した資産曲線こそが、求める聖杯であると言うほどです。
もちろん、最適な手法(ストラテジー)の組み合わせを見つけることは一筋縄では行きません。一番簡単なのは全てのストラテジーを組み合わせてみることですが、余りに盲目的で時間的にも不可能です。そこで、ヒントになるのが各ストラテジーの資産曲線です。相関係数を考慮することにより、ある程度は手法分散の成果が出ます。
ストラテジー毎に別々の資産を割り振ってトレードすることで、限定的な手法分散のポートフォリオが作れるのです。この段階でも他のシステムトレーダーから少し抜け出すことができます。複数のストラテジーを平行で動作させているシステムトレーダーは少ないのですから。
応用編では、このような限定的な手法分散レベルに止まりません。他のシステムトレーダーから完全に抜きん出るために、複数のストラテジーが同一の資金を共有しながら仮想売買する手法分散を解説します。
真に優位性のあるトレーディングシステムへ
システムトレード講座(応用編)をマスターすることにより、最終的には資金量を考慮したバックテストをベースに、合理的な複数ストラテジーのポートフォリオを作ることができます。
資産曲線から算出されるプロフィットファクター、ドローダウン、シャープレシオ等からトレーディングシステムの特徴と優位性を確認することができます。他の金融商品と比較するにしても、株式投資にどれだけのリスクを許容して、どれだけの利回りを期待するのかを総合的に判断できるようになります。なにより、自分好みのリスクとリターンを持ったトレーディングシステムを構築することで、確信を持って株式市場に投資できるようになるのです。
機関投資家やヘッジファンド、投資銀行などは大々的にヒト・モノ・カネを使うことで、本格的で重装備なトレーディングシステムを実現しています。当然、全てにおいて劣る個人投資家が同等なシステムを持つことは不可能です。しかし、それでも個人投資家としては、なるべくシステム運用や維持の負担が少なく、それでいて大手の機関投資家等と同じような仕組みで投資したいと思うものです。
システムトレード講座(応用編)で実現できるトレーディングシステムは全自動ではありませんし、重装備ではありません。核となる部分だけを自動化した軽装備のトレーディングシステムです。しかし、個人投資家のための本格的なトレーディングシステムに足る必要要件は全て備えています。
株式投資は資産運用の1つの方法に過ぎませんが、講座の導入・実践にあるようにきちんとリスク管理することで、他の金融商品を上回る利回りを提供してくれる可能性があります。
お金から自由になるためには運用のスキルが必要ですが、裁量で株取引の運用スキルを体得する頃には投資家本人の寿命が尽きてしまいます。システムトレードなら現実に即したバックテストや銘柄・手法の分散によって、運用スキルの体得にかなりの時間短縮が可能です。納得のいくトレーディングシステムを構築して、納得のいく利回りを株式運用に期待すること。それこそが、お金から自由になる最初の一歩になるのです。
システムトレード講座を受講するには、別途rpn標準版を購入する必要があります。詳しくは本ウェブサイトのプロダクトを参照ください。
トレードに関する講座内容やプログラムは全て無保証です。講座やプログラムの使用、プログラム自体の不具合による金銭的、その他損害を受けたとしても、一切保証はできません。また、銘柄の推薦や儲かるメソッドやストラテジーといった質問・相談の受付は行なっておりません。