黄金比率とフィボナッチ数列
何故か美しさを醸しだす比率というものが存在します。遠い昔から人はそれに気付いていたのか、芸術や建築など様々な分野で、この黄金比率が使われています。
ダビンチは黄金比率を意識した絵画を描いています(聖ジェロームの黄金矩形)。ミロのビーナスも然りです(つま先からヘソまでの長さと身長との比)。建築の世界でもパルテノン神殿の高さと横幅は黄金比率に従っています。パリの凱旋門も同じです。あのピラミッドの底辺と高さも黄金比率なのですから、人は一体いつの時代から、この比率に気付いて利用してきたのか不思議に思うものです。
この黄金比率(黄金比)は縦1に対して横1.6になるのですが、全角文字で描くと以下のような感じです(大体5:8の割合)。
□□□□□□□□
□□□□□□□□
□□□□□□□□ 1.0
□□□□□□□□
□□□□□□□□
このような黄金矩形(長方形)は何か安心できる形のようで、人は正方形よりもこちらの方が魅力的に感じるそうです。この比率に従えば何でも美しく見えるまさに黄金の比率です。ちなみに、黄金比率はφ(ファイ)、またはτ(タウ)と表現されますが、以下の数式で表すことができます。
1 + √5
黄金比率 = --------- = 1.618034… = φ(ファイ) = τ(タウ)
2
rpnで計算してみると以下のようになります。
1.61803
rpnでは小数点以下5桁しか表示していませんが、実際は小数が無限に続きます。無理数ではπやeが有名ですが、黄金比率のτも無理数になります。
別定義では、a:b=b:(a+b)のときのa:bのことで、a/b=1.618…。
さて、黄金比率を伴う矩形(長方形)は日常に氾濫しています。クレジットカードや名刺、トランプ、タバコの箱も黄金矩形だそうです。身の回りは安心できる長方形で囲まれているわけです。
実際に計ってみるとクレジットカードは縦5.5cmに横8.5cmですから1.5でちょっと違いますね。
ところが、面白いことに黄金比率よりも心地よい比率があるらしく、それは(3+√3)÷3なのだそうです。出てくる数字が全て3で美しいですね。
心地よい比率 = --------- = 1.57735…
3
rpnで計算してみると以下の値になります。
1.57735
黄金比率と誤差百分率で2.6%の違いですから微妙な差ですね。どちらが心地よいかを判定することは不可能でしょう。
ちなみに日本には昔から白銀比(別名大和比)というものがあり、寺の様々な設計にも使われているそうです。身近な例では、コピー用紙のA版B版も白銀比に従っています。この比は1:√2の関係になっていて、率にして1.41421です。
どうも大まかに言って、1.4x~1.6xの範囲が人間が好む比率になるようですね。
黄金比率を伴う長方形の描き方
ところで、この黄金比率を伴った長方形(黄金矩形)を描くことはできるのでしょうか。難しいように思いますが、定規とコンパスがあれば簡単に描くことができます。作図は数ステップで完成します。
まず、正方形(ABCD)を描きます。次にABとCDの中心を結びます(EF)。
+--------------+ +--------------+
| | | : |
| | | : |
| | | : |
| | ---> | : |
| | | : |
| | | : |
+--------------+ +--------------+
D C D F C
次にFとBを結んだ直線を半径とする円を描きます(文字で書いているので歪みますが、半径がBFの円と思ってください)。そして、辺CDの延長線との交わりをGとします。最後にGから辺ABの延長に垂直に線を引きます(H)。
+--------------+ + +--------------+-------+
| : | + | : | + |
| : | + | : | + |
| : | + | : | + |
| : | + ---> | : | +|
| : | + | : | |
| : | + | : | |
+--------------+ + +--------------+-------+
D F C G D F C G
完成した矩形(AHGD)の短辺を1とすると長辺が黄金比率になっています。黄金比率を伴った長方形の作図は意外に簡単ですね。
渦巻きの神秘
さて、自然には渦巻きの構造がよく表れます。意外に回転運動を伴うような構造は少なく、車輪に代表されるような動きは人間が作ったものと言えるでしょう。渦巻き構造のほうが回転構造よりも遥かにエネルギーロスが少なく、本来は渦巻きの動きを取り入れた道具や機械、運搬手段があればもっと世界は効率的になるという話もあるくらいです。
実際、エネルギーの無駄を好まない自然は渦巻き(スパイラル・螺旋)構造を多く使うようです。竜巻や鳴門の渦潮、宇宙サイズでは銀河のスパイラルアームに至るまでスケールも種類も様々です。
身の回りでもオーム貝に美しい螺旋構造が見られます。オーム貝は対数螺旋(等角螺旋とも言う)に従って外壁が作られています。そして、中心から放射状に引いた半径と外壁が交わる角度はいつも一定になるのです(以下の図参照)。
| *
| *
|
| *
********** *
*** | ** *
** *** a* d *
-*-------**+***-------------------*---->
*b *** *
* | *
** | *
* | **
*** |c * *
** ** * * *
| ** *
中心から引いた線と螺旋とが交わる角度はa、b、c、dのどの角度も同じです。このような螺旋構造は他にも象の牙や山羊の角、そしてカナリアの爪などにも見られます。
もうちょっと複雑な螺旋構造として、時計回りの渦巻きと反時計回りの渦巻きが混在するケースがあります。見た目にちょっと分かり辛いのですが、松かさを上から眺めると時計回りと反時計回りの二系統の渦が形作られているのが見てとれます。
このような構造は、ひな菊やパイナップルの実、ひまわりにも見られるのですが、この渦巻き(螺旋)の数を時計回りと反時計回りで数えると面白いことが分かります。ひな菊は21対34、松かさは5対8、パイナップルの実は8対13、ひまわりは大きさによって異なりますが、55対89か89対144になります。
でも、この数字どこかで見た気がしますね。そうです。フィボナッチ数列の隣り合っている数字です。フィボナッチ数列と対比して表すと以下のようになります。
----------------
1 1 2 3 5 8 13 21 34 55 89 …
| | | | | | |
松 パ ひ ひ
か イ な ま
さ ナ 菊 わ
ッ り
プ
ル
こんなところにもフィボナッチの数列が潜んでいるなんて、自然はどこまで神秘的なんだと思いませんか。そして、時計回りと反時計回りの螺旋の数を除算すると松かさが1.6、パイナップルが1.625、ひな菊が1.61905、ひまわりが1.61818と大体同じような数値になっているのも興味深いところです。
次は…
身近なものから宇宙まで、種類や規模を問わず黄金比率はどんなところにも潜んでいます。フィボナッチ数列も然りです。そして、フィボナッチと黄金比率は関連します。数列から黄金比率を計算してみましょう。ついでに、黄金比率の応用例も検証です。
関連記事に応用コーナーのウサギとフィボナッチがあります。また、フィボナッチ数列に関する記事が数列の謎解きで頭の体操にもあります。興味のある人は閲覧ください。
rpnプログラムを実行するには、rpn試用版かrpn標準版が必要です(バージョンの違いはこちら)。