滅多に起こらない確率
滅多に起こらないことが起こるとき、人は自らに問いかけます。「なぜ起こったのか…」「なぜ今のタイミングなのか…」考えれば考えるほど、神の気まぐれ(偶然の悪戯)を感じてしまいます。
例えば「宝くじに当選する」「交通事故に遭う」「飛行機が墜落する」など、世の中にはラッキーなこともアンラッキーなことも毎日じゃありませんが、確かに起こっています。その中には経験したくないような大惨事だってあります。
でも、滅多にないことって具体的にどれくらいの確率なのでしょう。統計的には5%以下(20分の1)の確率で偶然に起こったとは考えにくいとするのですが、一般的には20分の1の確率を滅多に起きない確率は言いません。
そこで、いくつかの滅多に起こらない事柄を確率の高い順(起こりやすい順)に並べてリストアップしてみましょう。
2万分の1 |
1年間に日本人が交通事故に遭って亡くなる確率
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---|---|
100万分の6 |
1回の搭乗で国際線の飛行機が墜落する確率
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100万分の1 |
1年間に1つの原発が炉心損傷事故を起こす確率
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1000万分の1 |
1枚の宝くじが1等に当たる確率
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1億分の1 |
1年間に人類滅亡クラスの隕石が衝突する確率
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1年間に日本人が交通事故に遭って亡くなる確率⇒2万分の1
>rpn 20000 n5e-05
実際に計算してみると、日本の人口は2010年の国勢調査時点で128,056,026人なので、2万分の1なら計算上は年間で6402.8人のはずです。ちなみに統計時期はズレますが、2009年の交通事故による死亡者数は4,914人でした。
自分の知り合いを6人以上経由すると世界中の人々と繋がることができるという6次の隔たり(Six Degrees of Separation)では、44人の知り合いを仮定していますが、知り合いの知り合いの知り合いの段階で8万人を超えます。
85184
すると、2万人に1人の確率の場合、友達の友達(FOF:friend of a friend)の友達の範囲で1年に1人に不幸が訪れていることになります。
1998年から認定自殺者は3万人/年を超えています(1997年は2万5千で35%の急増)。ちなみに推定自殺者は7万人なので、合計で10万人が自殺ということになります(G7(先進7カ国)で20代、30代の死亡原因トップが自殺なのは日本だけ)。実に自殺する確率は約1千分の1にもなります。総数を考えると自動車事故よりもこちらのほうに対策の比重を掛ける必要を感じます。
1回の搭乗で国際線の飛行機が墜落する確率⇒100万分の6
>rpn 6 1000000 /6e-06
人は100万分の1くらいの確率になると鈍感になるそうです(飛行機の墜落確率は微妙なラインですね)。当然、年間に登場する数が増えれば確率は増えます。年に10回乗れば10万の6です。100回乗る人は1万分の6にまで上がります。これは交通事故で亡くなる確率を超えます。
普通、世界のどこかで飛行機がいずれ墜落することは知っていても、まさか自分の乗った飛行機がその対象だとは思っていません。自分だけは都合よく例外だと思うバイアスが掛かっているものです。
飛行機事故を基準に考えると、リスクに鈍感になるポイントが分かりますね。
1年間に1つの原発が炉心損傷事故を起こす確率⇒100万分の1
>rpn 1000000 n1e-06
正確には「原子力発電所敷地内に10基(10原子炉)の原子力発電所があるとして、日本人の生涯の80年間にこの敷地内で炉心損傷事故を起こす頻度が1e-7(/炉・年)×10(炉)×80(年)」になります。
8e-05
現在、日本には55基以上の原発があるので、再計算すると次のようになります。
0.00044
1万分の4まで確率が上がってきました。交通事故による死亡確率は1年間での確率ですから、80倍すると次のようになります。
0.004
1000分の4ですね。交通死亡事故の1/10の確率で一生のうちに日本のどこかの原発で炉心損傷クラスの事故が起きることになります。
2011年の福島原発事故を考えると、確率に基づいてリスク管理することの限界を感じます。大津波、全電源消失、大型地震、テロ等が確率的に小さいと考え、対策を怠っていました。
原子力発電所で起きた事故の数や原発自体の安全性について、実践コーナー(時事アラカルト)の放射能からのサバイバルにあります。
1枚の宝くじが1等に当たる確率⇒1000万分の1
>rpn 10000000 n1e-07
これはラッキーなほうの確率です。ジャンボ宝くじになるのですが、1000万分の1となると人口比から計算すると12人は1等当選することになりますね。
ただし、この1000万分の1という確率は今まで出てきた滅多に起こらないことよりも、10倍以上起こりにくい事柄です。1等が当たった人は本当にラッキーな人なのです。
宝くじの控除率は50%くらいですから全部の金額を当選金に割り振れば、本当は24人の億万長者が生まれていることになります。
宝くじを始め、ギャンブルの控除率は高くなっています。詳しくは講座コーナーのシステムトレード講座に詳しくあります。興味のある人は閲覧ください。
1年間に人類滅亡クラスの隕石が衝突する確率⇒1億分の1
>rpn 100000000 n1e-08
恐竜の時代を終わらせたのが、隕石衝突が原因とも言われる6500万年前のKT絶滅(生物種の75%が死滅)で、隕石の直径は10km以上(M12~M14に相当:M11で人類滅亡クラス)です。
ところが、地球の歴史上では4億4000万年前(オルドビス紀)、3億6500万年前(デボン紀)、2億5000万年前(ペルム紀)、2億(三畳紀-ジュラ紀)万年前、6500万年前(中生代-新生代)の五大絶滅があったとされています。その規模ですが、オルドビス紀絶滅で生物種の85%、ペルム紀絶滅では実に95%もの死滅率となっています。
地球生命史の観点から大雑把に見積もると、大量絶滅は1億年毎に起こっているようですね。
滅多にない確率をグラフ化
上記のリストにある交通事故で死亡、飛行機が墜落、原発が炉心損傷、宝くじに当選、隕石で滅亡の確率をそれぞれグラフに描いてみます。
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①交通事故で死亡 0.00005 5e-05
②飛行機が墜落 0.000006 6e-06
③原発が炉心損傷 0.000001 1e-06
④宝くじに当選 0.0000001 1e-07
⑤隕石で滅亡 0.00000001 1e-08 ※1年単位での確率
この確率を次のように"data.txt"というテキストファイルに格納し、グラフ化します。
1 0.00005
2 0.000006
3 0.000001
4 0.0000001
5 0.00000001
隕石で滅亡を基準にして、それぞれを1億倍します。
^y 5000*
|
4000
|
|
3000
|
|
2000
|
|
1000
|
| * x
|o * * *
+------1-------2-------3-------4------->
交通事故で死亡 原発が炉心損傷 隕石で滅亡
飛行機が墜落 宝くじに当選
下に行くほど希な確率なグラフです。これを見ると"原発が炉心損傷"から"隕石で滅亡"までの確率は差がなく、まるで0%のように思えます。
対数で希な確率を見てみると
しかし、人は感覚のほとんどを対数関係で感じています。明るさ、音の大きさ、地震の大きさまで桁が1つ上がらないとはっきりと知覚できません。
つまり、現在の明るさから10倍にならないと明るくなったと感じられないのです。音の大きさも同様です。音の大きさが半分になったからといって静かになったとは感じません。
そこで、上のグラフの縦軸を片対数グラフにしてみましょう。
^y 5000*
|
1000
| *
|
|
100 *
|
|
|
10 *
|
|
| x
|o 5
+------1-------2-------3-------4-------*
交通事故で死亡 原発が炉心損傷 隕石で滅亡
飛行機が墜落 宝くじに当選
対数グラフで見ると差がないように思えた"原発が炉心損傷"から"隕石で滅亡"までの差がはっきりと分かります。大体、10分の1の割合で確率が減っていますね。
隕石で滅亡は人類文明の終わりなので、考えても仕方ないことなのですが、宝くじに当選する夢は捨てきれないものです。
さて、上記のリストはたまたま目に付いた希に起こる事柄を集めたものですが、不思議なことに一直線に並んでしまいました。知らず知らずのうちに希な事柄を対数で選んでいたのかもしれません。
人はリスクを対数的に感じている可能性があります。つまり、現時点より10倍悪化しないと危険性がアップしたと感じないことになりますね。
基本的に添加物や農薬は安全と思われる量の100分の1の安全率を掛けて基準を作ります。
滅多に起きない事柄への科学的なアプローチとしてポアソン分布があります。詳しくは実践コーナー(科学アラカルト)のランダムな放射線の捉え方にあります。
rpnプログラムを実行するには、rpn試用版かrpn標準版が必要です(バージョンの違いはこちら)。
xypとnpdはrpnの姉妹ソフトウェアです。詳しくはプロダクトを参照ください。