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ランダムな放射線の捉え方

 2011年の原発事故以来、放射線という言葉が日常の会話にも出てくるようになりました。今までは癌の放射線治療などで耳にすることはあっても、その言葉を単体で日常会話に使うことは専門家以外ありませんでした。

事故当時は放射線をちょっとでも浴びると危険とか、放射線は移るなど、デマ情報も飛び交いました。ただし、全部が間違っているわけでもありません。自然放射線を超える人工放射線量を浴びた場合の安全性は未だに意見の一致がありません。また、放射線は移りませんが、放射性物質は物理的な接触で移ります(適切に洗浄、除染すれば危険性は低まる)。

放射線は特定の物質が崩壊するときに出てくるのですが、そのタイミングを予測することはできません。一定の期間でどれくらいが崩壊するかを見積もることができるだけです。ある極小の一点から放射線を発する物質を見たとき、そこに放射線が飛んでくることは滅多に起こらないことが起こったと考えられるのです。

情報滅多に起こらない確率の例が応用コーナー滅多に起こらない確率にあります。興味のある人は閲覧ください。

滅多に起こらない事象を扱うポアソン分布

 このような滅多に起こらないことを扱うのに適した確率分布が、ポアソン分布(Poisson分布)です。フランスの数学者・物理学者であるポアソン(1781~1840)が没する2年前の1838年に発表しました(日本では江戸時代末期)。

もう少し厳密に定義すると、ある事象が偶然(ランダム)に一定の時間内あるいは空間内に発生する回数の確率分布がポアソン分布です。

ポアソン分布で有名な例は、馬に蹴られて亡くなったプロシア(プロイセン)兵士の統計です。次にあるのは20年間に渡る全部隊の死亡者数のグラフですが、20年間で196人の犠牲者が出ています。


  死亡者数
  ^y 20
  |          *
  |                              *
  -                        *         *
  |              *
  |
  |                *     *     *   *
  -        *
  |      *           *
  |    *                               *
  |            *             *
  -  *                 *
  |*                                     *
  |                                      x
  |o                                    20
  +|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-|-> 年数


間隔を空けずに死亡事故が起こっています。グラフの1年目から6年目までを見れば上昇トレンドを感じますが、それ以降はバラバラです。部隊編成の変更や装備の近代化が20年の間にはあったのでしょうが、事故数の推移は上記のグラフにあるとおり何らかのトレンドを感じさせません。

さて、統計を取った最初の1年は全体で3件の事故数だったのですが、実際には別々の部隊で1件ずつ事故が起こっています。やはり馬の事故で亡くなることはそうあるものではなく、1年間に1つの部隊で5人が犠牲となることは20年間でもありませんでした。

より詳細に、年別部隊別に発生した死亡事故の件数を度数分布にしたのが、以下のグラフです。

  度数
  *y 150                  +--------------+
  |                       | 死亡数  度数 |
  |                       |   0      144 |
  |                       |   1      91  |
  -                       |   2      32  |
  |      *                |   3      11  |
  |                       |   4      2   |
  |                       |   5      0   |
  |                       +--------------+
  -
  |
  |              *
  |
  |                      *               x
  |o                             *       5
  +------|-------|-------|-------|-------> (死亡者数)
  0人    1人     2人     3人     4人     5人


これがポアソン分布が初めて使われた実用例だそうです。この分布の形を頭の片隅に入れておいてください(後でまた出てきます)。

放射線はポアソン分布に従う

 さて、福島原発の事故は日本国内で発生したため、8000km以上も離れたチェルノブイリの事故と異なり、放射能の恐ろしさを他人事として考えることはできなくなりました。放射性物質を身近な存在として考えなければならない異常事態になったわけです。

情報放射線の特徴や外部被曝、内部被曝の危険性、過去の原発事故における被害等をまとめた記事が実践コーナー(時事アラカルト)の放射能からのサバイバルにあります。

その放射性物質ですが、一定時間内に飛び出す放射線(α線、β線、γ線)の本数がポアソン分布に従うと言われています。本当かどうか実際に試してみましょう。

放射線の検出実験の準備

 まず、放射線を検出するためには放射線源(放射線を出す物体)と簡易型の個人向け放射線測定器(GM式かシンチレータ式)が必要です。測定器は一分間あたりの放射線検出数(cpm)が表示できるタイプであれば大丈夫そうです。

cpmはcount per minuteのことで1分間での放射線検出数。ちなみに、cpsはcount per secondのことで1秒間での放射線検出数。s-1(-1は肩字)とも書きます。なお、60cpsは1cpmになります。

一方の放射線源ですが、昔はカメラのレンズや火災報知器に放射性物質が含まれていたそうです(現在は入手困難)。今でも簡単に入手できるものとしてはウランガラス(ブラックライトに当てると美しい蛍光を放つ)やラジウムボール(自宅でラジウム温泉を楽しむもの)、マントル(キャンプ用ランタンに使用)などがあり、放射性物質が微量に含まれています。

ウランガラスには放射性物質のウラン(α線を出す)が、ラジウムボールにはラジウム(α線を出す)が、マントルにはトリウム(α線、β線、γ線を出す)が含まれています。
日本には有名なラジウム温泉が多くあります。鳥取県の三朝温泉、山梨県の増富温泉、秋田県の玉川温泉などです。温泉水を飲むことで痛風やリュウマチ、神経痛、婦人病や高血圧、そして糖尿病にも効果があるとのことです(ホメオパシー)。もちろん、低線量被曝の可能性はあります(岩盤浴も同様)。
鳥取県の三朝温泉では地元住民に対して30年に渡る疫学調査が行なわれ、他の地区よりも癌の死亡率が低いという結果が出ていました。よく引用されるホルミシス効果です。ところが、その後の調査では胃癌以外の死亡率は変わらず、逆に肺癌は有意に増加しているとの結果が示されています(胃癌の死亡率は低かったのですが、ラジウム温泉以外の温泉でも同じ傾向)。
鉱石では姫川薬石も有名です。姫川薬石の場合はトリウム(α線、β線、γ線)とルビジウム(β線、γ線)が主になりますが、お風呂に入れたり(温浴吸入)枕元に置いたり(吸気)することで健康に寄与するとも言われています。ドイツやオーストリアでは放射性希ガスによる吸入療法が医療として確立していますが、全ての医学者が効能を認めているわけではないのが現状です。

計測は放射線測定器のLED表示(放射線数)を目で確認すればよいのですが、放射線をずっと浴びながら観測し続けるのも嫌なので、測定器の警告アラームの回数で代用することとします。

        *


 バックグランド(自然放射線量)を一定数超える異常な放射線(γ線)を検出すると警告アラームが鳴るように設定します。また、人体にただちに影響のない、比較的弱い放射線源も用意します。

当然ですが、通常の状態では滅多に警告アラームは鳴りません。近くに放射線源があったとき、異常に多い放射線数を検出するとアラームが鳴ります。放射線量次第なのですが、普通はアラームが鳴ったら危険なので退避します。まさに、通常では起こりえないことが起こった事象を扱うポアソン分布そのものです。

さて、一定時間内のアラームをカウントするとどんな分布になるのでしょうか。果たして、アラームの回数はポアソン分布に従っているのでしょうか。

放射線源を置いてのγ線検出実験

 直付けで測定すると0.5μSv/h(35cps)の放射線源(0cmで計測)から、放射線測定器を15cm離した場所(線源から検出部+までの距離)でアラームの回数を観測します。図にすると以下の感じです。

     ▽▽
      △  <----------->  +□       バックグラウンド:0.09μSv/h(9cps)
   放射線源    15cm     測定器      測定ポイント線量:0.1μSv/h(10cps)(1%の統計誤差)
  0.5μSv/h           0.1μSv/h


なるべくバックグラウンドの空間線量が低い場所でテストする必要があります。放射線源と同じ線量のバックグラウンドでは放射線をどこから受けたのか分からなくなってしまいます。
理論的には放射線源が極小の一点なら線量率は距離の2乗に反比例しますし、無限平面なら距離に関係なく一定です。ただ現実問題として、放射性物質を含んだ物体はある程度の大きさになること、平面(地面)にも凸凹があること、放射性物質は均一に存在しないことなどから、実測値が理論値と一致することは希です。

アラーム音を聞いていると、放射線源から出てくる放射線はタイミングも数もバラバラに思えます。実際、直付けにすれば最大限の放射線を受けることになりますが、距離が離れると測定器に当たる放射線の量は急激に減ってくるので当然の結果ですね。

では、アラームが鳴った回数を30分間記録してみましょう。データは"alarm.txt"というファイルに格納されているものとします。結果は以下のとおりです。

  >type alarm.txt
  0       0
  1       0
  2       1
      :
    (中略)
      :
  27      1
  28      1
  29      0


1列目が経過分数で2列目がアラームの回数です。一応、基本統計量を計算しておきましょう。

  >rpn x _ <alarm.txt | rpn -c statinfo
  デ ー タ        30
  最 小 値        0
  最 大 値        4
  範    囲        4
  合 計 値(Σ)    27
  平 均 値(μ)    0.9
  分 散 値(σ2)   1.09
  標準偏差(σ)    1.04403
  分 散 値(s2)   1.12759
  標準偏差(s)    1.06188
  歪度(a3≒0)    1.25484
  尖度(a4≒3)    4.04486
  変動係数(ν)    1.17987


平均アラーム数が0.9回(平均1分間に1回は鳴らない)、最小アラーム数が0、最大は4です。なお、標準偏差は1.04ですね。データ数が少ないので即断は禁物ですが、歪度と尖度からするとガウス分布から外れる感じです。

ちなみに分布は不明ですが、外れ値があるかどうか簡易検証してみましょう。

  >rpn x _ <alarm.txt | rpn -c outlier
  3
  3
  4


どうも、アラーム数が3回と4回は全体から見ると外れ値扱いになるようです。

次は…

 滅多にないことは神の領域的な感じがするものですが、そんな偶然の事象も科学的に探求することができます。偶然に発生する事象を扱うポアソン分布によって、人がコントロールできるかもしれないのです。

実際に放射線源を用意して、放射線測定器のアラームが鳴った回数を記録することで放射線の検出数がポアソン分布に従うかどうか実験してみました。基本統計量では余りパッとしませんが、アラームの発生タイミングを時系列で見たり、度数分布を描いてみることで、徐々に放射線の振る舞いが見えてきます。

果たして、放射線はポアソン分布に従っているのでしょうか。それとも全然、別な分布形状なのでしょうか。番外編として、放射線測定器のアラームに関する考察もあります。

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