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不平等と格差の見える化

 ほとんどの場合、人は絶対的な指標で判断しません。相手とどれくらいの差があるのかを相対的に捉えることしかできません。例え、どんなにお金持ちでも周りがそれ以上に金持ちであれば劣等感を感じてしまう生き物です。

ただでさえ、隣の芝生は青く見えてしまうものです。優越感や劣等感は最終的に争いを生み、競争心を煽ります。しかし、悪い面ばかりではありません。自由な競争社会は活気に溢れ、様々なサービスや商品が出現します。

逆に優越感も劣等感もない全くの平等な社会であれば争いはなくなります。他人と同じものを持ち、同じ待遇、同じ価値観、同じだけの努力、そして同じような人生を歩みます。多様性のない平穏な格差なき社会です。

どちらの社会を望むのかは人によって異なりますが、両極端がまずいことには大多数の人が賛同するでしょう。では、その格差の程度を判定する指標はないものでしょうか。

        *


 そこで登場するのがジニ係数という指標です。これを使うと格差がどれくらいあるのか数値で判定できます。数値化することにより、グループや社会、そして国家などを比較することができます。

ジニ係数で格差を判定

 イタリアの社会学者であるコッラド・ジニ(1884~1965)によって考えられたジニ係数は、所得分配の不平等さを数値で表すことができます。係数の範囲は0から1までで、1に近いほど格差社会、0に近いほど平等な社会を示しています(1.0だと全所得を一人で独占、0.0だと全員で平等にシェア)。

ジニ係数は1936年(昭和11年)に発表された指標です。0.2はとても平等な社会で0.3は普通、危険水準なのが0.4。これを超えると格差は広がり社会的に不安定な状態(暴動等、治安の悪化)に移行します。0.5にもなると80対20のパレートの法則に近づき、完全な格差社会が完成します。
ちなみに2000年前後での日本のジニ係数は0.39です。アメリカは0.45、フランスが0.25、最悪はボツワナやブラジルで0.5を超えます。危険水準の0.4は概ね妥当な感じがしますね。また、世界的に見ると計画経済(社会主義)だった国々のジニ係数は比較的小さめな傾向にあります。
2014年現在、世界の人口は70億人以上。あるNGOの調査では100人足らずの富裕層の資産と貧困層35億人分の資産が等しいという結果になっています。世界の半数が貧困層であることにも驚きますが、たった0.000001%の人たちが世界の50%の富を独占しているわけです。

rpnでジニ係数を計算

 ジニ係数を算出するには繰り返し計算が必要なので、rpnプログラムにまとめてあります。

ジニ係数プログラムのダウンロード

  • ジニ係数プログラムのZIPファイルをダウンロードしてください。
  • ダウンロードしたZIPファイルをダブルクリックするとgini.objが表示されます。
  • gini.objを格納したいフォルダにドラッグすると以下のダイアログが出てきます。
  • パスワードを入力してください。一致していれば、gini.objが解凍されます。
      ※gini.zipのダウンロードはこちら


  +-------------------------------------------------+
  |  パスワードの入力                                  |
  +-------------------------------------------------+
  |                                        +-----+  |
  |  ファイル'gini.obj'はパスワードで保護されてい | OK  |  |
  |  ます。 パスワードを入力してください。      +-----+  |
  |                                                 |
  |              +----------------------+  +-----+  |
  |  パスワード(P): |                      |  |キャンセル|  |
  |              +----------------------+  +-----+  |
  +-------------------------------------------------+


 ※パスワードは講座サポートpasteプログラムのダウンロードと同じです。

ここでは、c:\rpnディレクトリにobjファイルが保存してあるものとして説明します。DOSプロンプトを起動して、c:\rpnまで移動してください。

ジニ係数プログラムの使い方

ジニ係数を計算する方法は簡単で、数値が格納されたテキストデータをginiプログラムに流し込むだけです。例えばテキストファイルの"tmp"に100、200、300の数値が入っている場合、次のようになります。

  >rpn -c gini <tmp
  0.333333


ジニ係数は0.3と計算されていますね。また、キーボードから直接数値を入力するときは以下のrpn式を使います。どちらでも便利なほうを使用するといいでしょう。

  >rpn -c gini
  100
  200
  300
  ^Z
  0.333333


さて、以下に格差に関する2つの身近な事例を示します。実際のデータを見て、ジニ係数がどのような値になるのか、大雑把な感覚が掴めます。

給与の格差をジニ係数で検証

 とある架空の会社の給与を使ってジニ係数を計算してみます。まず、リアルな雰囲気を感じるために役職と給与を併記した組織図を示します。社長含め、全員で8人の構成だとします。

               社長(427)
                   |
           +-------+-------+
           |               |
       部長(339)       部長(276)
           |               |
       係長(266)       係長(255)
           |               |
      +----+----+          |
      |         |          |         ※括弧内が給与
  担当(199) 担当(197)  担当(181)       (単位は千円)


社長以下、役職が下がるに従って給与も下がっていき、担当は全て20万円以下になっています。グラフにすると様子がよく分かります。縦軸が給与、横軸が社員で、給与の降順に並べてあります。

  ^y 450
  |   * <-- 社長
  |
  |
  -             部長
  |        * <--+     係長
  |             |    +----+
  |             v    |    |
  |             *    v    v       担当
  -                  *    *    +----+----+
  |                            |    |    |
  |                            v    v    |
  |                            *    *    v
  |                                      *
  |                                      8
  +150|----|----|----|----|----|----|---->


次に基本統計量を出してみましょう(説明に必要なもののみピックアップしてあります)。なお、金額はファイルの"pay.txt"に格納されているものとします。

  >rpn -c statinfo <pay.txt | npd
  デ ー タ        8
  最 小 値        181
  最 大 値        427
  範    囲        246
  平 均 値(μ)    267.5


給与の最大額は43万円で最小額が18万円、平均給与は27万円です。給与の範囲が25万もありますが、ジニ係数を計算すると以下のようになります。

  >rpn -c gini <pay.txt
  0.178505


結果は0.18です。給与の金額だけを見ると結構な格差があるように思いますが、前述の格差指標から考えると、0.2以下なのでとても平等になります。もちろん、この会社内でという条件付きです。

担当から見ると倍以上の給与を社長が貰っていると不満に思うかもしれませんが、責任の大きさを考えればある意味、当然です。ちなみに社内で給与格差があり過ぎると声が上がるのがジニ係数0.4以上だと仮定すると、社長が貰える給与の限度額は計算上では121万円になります。

金銭から感じる格差とジニ係数が示す格差とのギャップを体得するにはよい事例ですね。

労働者の賃金格差をジニ係数で検証

 今度は身近にある格差の例です。1999年に労働者派遣法が改正され、適用業務が拡大されました。結果、正社員から非正規社員への流動が起きています(2013年時点で40%弱が非正規社員)。当然、給料の格差は拡大するのですが、逆に安泰なのが公務員で大きな流動が発生したというニュースはありません。

そこで、日本の労働者を派遣社員、正社員、公務員に分けて、かつ高給が取り立たされるNHK職員も加えて、ジニ係数を計算してみましょう。総人数を計算することはできないので、仮想の4人として計算します。どれくらいの格差があるのでしょうか。

民間企業の正社員の平均給与は約410万円と言われますが、派遣社員などの非正規社員は約170万円です。その差は240万円で実に2.4倍。仕事の難易度や時間量が1/2以下なら納得できますが、ほとんどの仕事において正社員と間に違いはありません(管理職・役員クラスは除く)。

そして、より格差が感じられるのは公務員の給与で、公務員の平均は約650万円。極め付けがNHK職員の給与で、その平均は約1200万円にも及びます。グラフにすると次のようになります(テキストファイルの"japanpay.txt"に4人の給与データが格納されているとします)。

  >rpn 1 -c rownum | xyp -x,4 -y,1200 -s1,300 -da -k4 -m -n <japanpay.txt
  ^y 1200                                d
  |
  |
  900
  |
  |
  |                            c
  600
  |
  |                  b
  |
  300
  |        a
  |                                      x
  |o                                     4
  +--------1---------2---------3--------->


縦軸が平均給料です。横軸に沿って、aが非正規社員、bが正社員、cが公務員、dがNHK職員です。この給与格差をジニ係数で計算してみましょう。

  >rpn -c gini <japanpay.txt
  0.45679


なんと、0.457。かなりの格差です。もう少しで完全な格差社会の完成です。もちろん、日本の労働人口を仮想の4人として計算しているので、正確ではありません。しかし、その人口比は正社員(3000万人)≧派遣社員(2000万人)≧公務員(400万人)≧NHK職員(1万人)なので、実際はこれを上回るジニ係数になっている可能性があります。

別の調査による世界の公務員平均年収額で日本の特異性が分かってきます。国名(公務員平均年収、国民平均年収)とするとアメリカ(357万円、325万円)、イギリス(275万円、240万円)、フランス(198万円、180万円)、イタリア(217万円、200万円)、日本(724万円、412万円)です。日本以外は国民の年収とほぼ同じです。中には公務員の方が少ない国もあってドイツ(194万円、205万円)、カナダ(238万円、252万円)、オーストラリア(360万円、500万円)などは公務員年収が国民平均の7割です。日本が突出して公務員年収が高いことが分かります(国民平均の1.75倍)。

厚生年金の世代間格差をジニ係数で検証

 もう1つ、身近な格差の例を挙げましょう。厚生年金の世代間における不公平感についてです。

年々、年金の納付額は増え続け、支給開始年齢が徐々に延ばされている年金ですが、国民年金に比べ優遇されている厚生年金ですら、世代間の不公平感は尋常ではありません。以下のデータは生まれた年代別に総受給額から総納付額を差し引いたものです(2014年現在)。

  1940 +3090
  1950 +770
  1960 -260
  1970 -1050
  1980 -1700
  1990 -2240
  2000 -2610
  2010 -2840


とても大きな格差です。1940年代(70歳)と1950年代(60歳)生まれの人は納めた額より貰う額の方が大きいのに対し、1960年代生まれからはマイナスに転じ、1970年代以降の生まれは納めた額より1000万円以上も損になっています(2010年代生まれはマイナス3000万弱にも)。

ただでさえ、インフレのリスクがあるのに、納めた金額より少ない金額を貰うのは何かの罰ゲームかと思うくらいです。1940年代から2010年代生まれの全てを8人と考えてジニ係数を計算してみましょう(テキストデータの"nenkin.txt"に上記データが格納されているとします)。

  >rpn _, 2840 + < nenkin.txt | rpn -c gini
  0.584743


完璧な格差です。ほとんどパレートの法則どおりでしょう。おまけに少子高齢化で、近年生まれている人の数は昔に比べて確実に少ないので、実際の総人数で計算するとより格差が開くはずです。

この格差をグラフにすると、年金制度の破綻具合が一目で分かります。

  >xyp -x1930,2020 -y-3000,3000 -s10,1000 -m <nenkin.txt
  ^y 3*00
  |
  -
  |
  |
  -
  |       *
  1930                                2020
  +---|---|----*---|----|---|----|---|--->
  |                                      x
  -                *
  |
  |                    *
  -                         *
  |                             *
  |-3000                            *


販売額の格差をジニ係数で検証

 最後に少し変わった応用例です。とある小売店の500件の販売データがあるとします。以下のそれぞれの数値は顧客が一回に購入した金額です(税込で単位は円)。

  4704 4070 2900 2310 7650 9397 4120 4020 1940 1140
  2217 1570 455 1668 1081 882 2040 2945 1840 3552
  2973 8383 2764 2090 1080 1470 1520 2340 2033 1217
                        :
                      (中略)
                        :
  2639 1420 1105 1640 2119 2140 1240 1320 1250 1480
  2240 3320 2720 1299 3690 2759 2140 2320 2140 1830
  1800 488 1140 1640 5975 540 890 4408 2140 2358


テキストファイルの"sale.txt"に販売額が格納されているとして、基本統計量を出してみます。

  >rpn -c statinfo <sale.txt | npd
  デ ー タ        500
  最 小 値        341
  最 大 値        52360
  範    囲        52019
  平 均 値(μ)    3127.87
  標準偏差(s)    3342.06
  歪度(a3≒0)    7.79561
  尖度(a4≒3)    101.242


平均客単価は3127円、最大が52360円で最小が341円です。標準偏差値が大きく、実際に歪度と尖度を見てもガウス分布とはかけ離れた分布のようですね。さっそく、ジニ係数を算出してみましょう。

  >rpn -c gini <sale.txt
  0.387338


結果は0.39です。所得分配の格差から考えるとギリギリで普通の状態であることから、1件あたりの販売額に大きな偏りはないと解釈することができます。

        *


 営業成績や販売高、在庫高や仕入高など、ジニ係数の応用範囲は広そうです。担当毎や顧客毎、品目毎のような比較以外にも、一定の期間毎に比較することでバランスの変化を端的に知ることができるかもしれません。あるいは株価にも適応して、東証一部や二部、新興市場などを計算してみると面白い結果が出るかもしれませんね。

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