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ピタゴラス音階を導くには

 ドレミファソラシド。改めて言葉にすると変わった文字の並びです。この音階の組み合わせで無限の曲が作られていきます。使う文字に限りがあっても生み出される物語は伝記から小説、詩、短歌など多岐に渡るように、音楽もクラシックからロック、J-POPに至るまですべてドレミの音階で作られています。

もともと音楽は貴族たちのものでしたが、それがバッハ(1685~1750)の頃に大衆に広がっていきます。チェンバロが家庭に普及し、楽譜を通じて音楽が市民のものとなっていったようです。そして現在、日常生活に音楽が溢れ、テレビやラジオ、店舗、雑踏…。どこにいても何かしらの音楽が耳に入ってくるようになりました。

バッハはオルガンの名手でもあり、町で演奏することもあったそうです。西洋音楽の礎を成した人でもあり、現代の音楽にも多大な影響を与え続けています(バッハのカノンコードなど)。

幼児でもそれらのメロディーを自然に口ずさみます。稚拙でいい加減な音程ですが、高い音と低い音は見事に使い分けます。きちんとした音楽は小学校から習い始めますが、そのうちでもドレミファソラシドは早いうちに覚えるもののひとつです。「♪ド~はドーナツのド~、♪レ~はレモンのレ~」という具合に。

でも、このドレミファソラシドって一体、何でしょう。音の並びに何か規則性でもあるのでしょうか。そもそも、どうしてドレミファソラシドの8音なのでしょうか。

ドレミファソラシド(Do Re Mi Fa Sol La Si Do)はイタリア語です(英語ではCDEFGABで表記)。なお、1オクターブ内にAからGの7音を割り振ったのは中世の音楽教師だったグイード・ダレッツォですが、それまではABCDEFGHIKLMNPの14音を2オクターブ内の音名としていたようです。

音階の周波数

 音程をつけて「♪ドレミファソラシド」を歌ってもらうと歌声は段々高くなっていきます。逆に「♪ドシラソファミレド」を歌うと音は低くなっていきます。そう教えられたからなのですが、実際にピアノの鍵盤を左から右に白鍵だけ叩いていくと規則正しく音が高くなっていくのが分かります。

面白いことにドレミファソラシドは永遠に続きます。ドレミファソラシドの次はやはりドレミファソラシドに聞こえます。これは最初のドと次のドの間に秘密があるからです。

音の高さは周波数の高さに等しいことが分かっています。そこで現在使われている平均律によるドレミファソラシドの周波数を調べてみましょう。ドレミファソシラドといっても正確には半音上がった音もあるので、全部で12音あります。#の付いた音はピアノの黒鍵にあたる音です。

                          音名    Hz
                          =============
                          ド    523.251 オクターブ5
                        シ    493.883
                      ラ#   466.164
                    ラ    440.000   ※ラを440Hzの基準音と考えた平均律。
                  ソ#   415.305
                ソ    391.995
              ファ# 369.994
            ファ  349.228
          ミ    329.628
        レ#   311.127
      レ    293.665
    ド#   277.183
  ド    261.626                         オクターブ4


全部で13音ありますが、最初のドと最後のド(1オクターブ上のド)は同じと考えるので12音です。よく見ると2つのドの周波数はほぼ2倍になっていますね。

88鍵のピアノで表すと次のようになります。基準のAの相対的な位置が分かります。最も低音の周波数は27.5Hzで最も高音は4185.6Hzですが、見事な対数スケールになっていることにも注目です。ヴェーバー・フェヒナーの法則どおり、五感(耳)の感度に合致しているわけですね。
    1/8vHz 1/4vHz 1/2vHz vHz    2vHz   4vHz   8vHz   16vHz  C4(261Hz)をvHzとした倍数
  ABCDEFGABCDEFGABCDEFGABCDEFGABCDEFGABCDEFGABCDEFGABC
  0 1      2      3      4    ^ 5      6      7      8      オクターブ数
                        基準のA(440Hz)


理由は完全に解明されていないのですが、人間はある音の周波数のちょうど2倍の周波数の音を同時に聞くと心地よく感じるらしいのです。何でも雑踏などの雑音があるところで、この2つの音を同時に聞くと音の違いが分からないようなのです。

ほとんどの楽器は倍音を持っています。ギターでも弦を弾くとその周波数の2倍、3倍…の周波数が出ています(例外はフルートで高音域は倍音が出ていないらしい)。楽器の豊かな音色は倍音成分のバランスによって作られているわけです。なお、人工的に作られた時報の音には倍音は含まれていません。人間は倍音成分がないと警戒心を抱くようで、そのために救急車のサイレンやブザーも倍音が少なくなっているそうです。

上の周波数表にあるように、ドレミファソラシドの最初のドと最後のドは周波数が2倍の関係にあります(261.626Hzと523.251Hz)。そして音の区別が付かないのなら同じと考えるわけです。当然、次のレも同じで周波数が2倍のレは同じと考えます。

このようにちょうど周波数が2倍になる音の間隔がオクターブです。最後のドは最初のドより1オクターブ上という言い方をします。通常、女性の声は男性の声に比べると、1オクターブくらい高いものです。

一般的に男性の音域はオクターブ2のソからオクターブ5のレまで。女性はオクターブ3のソからオクターブ5のソまで。周波数にすると男性は98Hz~587Hz、女性は196Hz~784Hzになります。意外に思いますが、女性の音域が2オクターブなのに対し、男性は2オクターブ半と広いわけです。なお、声変わりによる男性の低音域は進化的には突然変異によるもので偶然の産物です。
人間の音域を先ほどのピアノの音域と比較してみると、男女の音域の違いがよく分かります。
  ABCDEFGABCDEFGABCDEFGABCDEFGABCDEFGABCDEFGABCDEFGABC
  0 1      2      3      4      5      6      7      8    オクターブ数
               <---男性の音域---->
                      <--女性の音域->


カラオケで女性が男性の歌を楽に歌うには機械のキーを1オクターブ上げると良いわけです(男性が女性の歌を歌う時は1オクターブ下げ)。ただし、曲の雰囲気は崩れてしまい、うまいとは言われません。やはり、なるべく原曲に近いキーで歌えるように努力するよりないようです。
ちなみにオーケストラの全音域はファゴットのBb(29Hz)からピッコロのC(4186Hz)になります。

情報楽器などに含まれる様々な周波数は、数学的・工学的に求めることができます。詳しい記事が実践コーナー(科学アラカルト)のフーリエ変換で周期を発見にあります。


では、これら12音の周波数をグラフにしてみましょう(便宜上、13番目のドも描きます)。

  >rpn 1 -c rownum <doremi.txt | xyp -x,13 -y250,550 -s1,100 -n -m | npd
  ^y 550
  |                                      *
  |                                   *
  |
  450                              *
  |                             *
  |                          *
  |                       *
  |
  350                  *
  |                 *
  |           *  *
  |        *
  |     *                                x
  |  *                                  13
  +251--2--3--4--5--6--7--8--9--10-11-12->
     ド #  レ #  ミ ファ# ソ #  ラ #  シ ド


横軸が音階、縦軸が周波数ですが、ドレミと進むにつれて周波数が高くなっているのがわかります。それも階段状にきれいに並んでいるように見えます。音階を上がる度に一定の周波数が加えられているのでしょうか。

等差数列と等比数列

 早速、その値を調べてみましょう。同じ値が加算されているとすれば等差数列になります。前の値にある値を加えると次の値になるわけです。それぞれ順に数値の差を取ってみましょう。

  >rpn -c rowdif <doremi.txt
  15.557
  16.482
  17.462
  18.501
  19.6
  20.766
  22.001
  23.31
  24.695
  26.164
  27.719
  29.368


計算すると値が一定ではありません。ド(261.626Hz)に15.557Hzを足すとド#になりますが、ド#からレに上がるためには16.482Hzを足さなければなりません。しかもその値は増えていっています。

人間はドとド#の15Hzの違いを聞き取っていることになります。絶対音感のある人でも半音の1/4の違いを感じ取るのは難しいらしいので、15/4=3.75Hzくらいが違いを聞き取れる限界なのかもしれません。

最後のシからドに至っては29.368Hzで、ドからド#に上がった周波数の倍近くになっています。グラフにして確認してみましょう。

  >rpn -c rowdif <doremi.txt | rpn 1 -c rownum >tmp
  >xyp -x,12 -y,40 -s1,10 -n -m <tmp
  ^y 40
  |
  |
  30                                     * ・・ シ→ドの周波数の差
  |                                  *              ^
  |                            *  *                 |
  |                     *   *                       | 約2倍
  20              *  *                              |
  |     *  *   *                                    v
  |  * ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ド→ド#の周波数の差
  |
  10
  |
  |                                      x
  |o                                    12
  +--1--2--3---4--5--6---7--8--9---10-11->


明らかに加える周波数が増えていってますね。実はこの周波数の並びは等差数列ではなく、等比数列になるのです。順にそれぞれの2つの数値の大きい値を小さい値で割っていきます。

  >rpn -c rowdiv <doremi.txt
  1.05946
  1.05946
  1.05946
  1.05946
  1.05946
  1.05946
  1.05946
  1.05947
  1.05946
  1.05946
  1.05946
  1.05946


今度はきれいに一致しましたね。前の周波数に1.05946を掛けると次の周波数が求まることになります。つまり、以下のようにドの周波数に1.05946を掛けるとド#の周波数277.183になるのです(小数点3桁の違いは数値計算による誤差)。

  >rpn 261.626 1.05946 *
  277.182


なぜ等比数列なのか?人間の感覚器官の多くは差では違いを感じないようになっています。例えば音の大きさや明るさもそうです。違いを比率(どれくらいの割合が増えたか)でしか感じられません(対数感覚)。そのため、等差よりは等比で定義したほうが感覚に合致するのです。

ハーモニーを求めて

 さて、ここで少し視点を変えてみましょう。音楽の3大要素はメロディーとリズムとハーモニーです。でも、メロディーとリズムはなんとなく分かりますが、ハーモニーとはいったい何でしょう。

普通、いろんな高さの音が同時に鳴ると不快になります。でも、2つの音が同時に鳴っているのに心地よく感じることがありませんか。それこそがハーモニーなのですが、このハーモニーは適当な音同士を鳴らしてもうまくいきません。下手すると不協和音となって耳障りに感じます。

カラオケでもハモることがありますよね。うまい人たちのハモりはメロディーを支える安定感があります。このハモりこそがハーモニーです。極論するとハーモニーとは倍音のことです。

ドレミファソラシドの最初のドと最後のドは周波数が2倍でしたね。最後のドは最初のドの倍音です。したがって、同時に鳴らしても綺麗に聞こえます。まさにハーモニーです。

まったく同じ高さで歌うと1倍の倍音になるので、これも不快には感じません(所謂、ユニゾンですね)。そして、ハモリと言えばデュエットですが、男性パートと女性パートが1オクターブ綺麗にずれていると2倍音になるので綺麗に聞こえるはず。

ピタゴラス音律の発見

 紀元前500年もの前、かの有名なピタゴラス(BC582~497)が弦の長さを半分にして爪弾くと、元の長さの弦を爪弾いた音と相まってとてもよい響きになることを発見します。区別が付かないくらいにです。これが協和音の発見です。

  |<------------>|  弦を爪弾いた音

  |<---->|          弦の長さを1/2にして爪弾いた音


今考えれば、2倍音だから綺麗に響くことは当然ですね。とにかく、1:2が綺麗に響くならということで他の組み合わせを試したのですが、果たして2:3も綺麗に響くことに気付くことになります。

ピタゴラス学派は数学に造詣が深く、世界は数学で説明できるとする学派です(「万物は数である」は有名)。1と2、2と3の組み合わせは整数の比です。そして、素数です。願ってもない組み合わせでした。この組み合わせの探求が後の音階へと通じることになります。
  |<------------>|        元の弦を爪弾いた音

  |<------->|             (元の弦の長さ):(短くした弦の長さ)=3:2
                          ⇒周波数を1.5倍にして爪弾いた音


これが心地よい2音の協和音になるわけです。では、短くした弦も3:2の長さにすれば協和音を出すはずで、その弦のまた3:2となる弦の長さが…と永遠に続くと考えました。実際、ピタゴラスはそれを試します。

ただ、弦を弾いて実験するとなるとどんどん弾く弦が短くなり、音が高すぎて聞き取ることは困難だったでしょう。そこで、巧みな方法を考え付きます。

最初の弦を弾いた音の2倍を超えたら、弦の長さを2倍にして(周波数は半分になる)、最初の弦の音の高さ≦x≦2倍の音の高さを満たすxになるように弦の長さを決めました。

2倍の高さの音は元の音と区別が付かないくらいなのだから同じと考えるわけです。

そして、ピタゴラスの発見によれば面白いことに13回目に弦を短くしたとき、最初の弦を弾いた音と同じ音が出たそうです(弦が同じ長さになった)。ピタゴラス音律の発見です。

ドレミファソラシドをそれぞれ1度2度…8度と表現することがあります。これによれば弦の比率が1:2だと8度の音程が、2:3だと5度の音程が、3:4だと4度の音程が得られることになります。

次は…

 2つの音が心地よく響くためには、弦の長さが整数比であれば良いことにピタゴラスは気付き、2:3の整数比に拘ってその秘密を探求しました。何度か試すうちに元の音に戻った時、感動したことだろうと思います。その過程で生まれた12音が現在に繋がっています。

では、2500年以上前の協和音に関する実験を、今度は計算によって辿ってみたらどうなるでしょう。当時は周波数などと言う知識はなく、耳による判定しか出来ませんでしたが、今では弦の長さと周波数が比例していることが分かっています。弦を半分にすれば周波数は2倍です。すると、2:3=1:1.5の比率に従って計算していけばピタゴラスの足跡を追えるはずです。

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