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後悔しない意思決定にAHP

 人は選択する生き物です。いつも選択しています。実際に朝起きてから、まさにこのときまで実に多くの選択を行なっています。すぐ起きようか5分寝てようか、ネクタイは明るい感じがいいか誠実な感じがいいか、傘を持っていこうか…。

全て選択することで先に進んでいけます。いくつかは無意識のうちに判断できますし、ちょっと複雑な判断でも「今日は朝から得意先と打ち合わせがあるので誠実な感じで」とか「空模様が大丈夫そうだから」とか、頭の中で情報を整理して、ほとんど直感レベルで選択しています。

このような経験と勘による選択が全く役に立たないのなら、毎日の生活はとてもドラマティックになってしまいます(選択の半分は外れるのですから)。しかし、毎日がほどほど予想通り過ごせているということは、経験と勘による選択もまんざらでないことを示しています。

経験と勘に頼らない選択の限界

 逆に経験と勘に頼らない選択の多くは、何らかの絶対的な価値基準に頼っています。例えば、価格や品質、寸法や重量、耐久性など、厳密に数値化できる特性です。

もし安価であることが唯一の価値基準なら、レストランのオーダーでも原材料の発注でも簡単です。値段の安いほうを選べば問題ありません。市場が決めた値段という絶対基準があるため、比較が容易だからです。

人物査定であっても、社内で決められた価値基準(リーダーシップ、協調性、環境への適用力、勤勉さ等々)を数値化して合計します。最後には数値化できない定性的な評価を加えることが普通ですが、それでも結局のところ、数値同士の比較に帰着します。

しかし、数値化するのが難しい場合はどうでしょうか。例えば、A社とB社のどちらかをビジネスパートナーとして選びたいが、相手企業の技術力や営業力、社員の質などの数値化が曖昧で不明なとき、選択は困難を極めます。

完全な情報が得られない状況から、ベストな選択を為し得るにはどうすればいいのでしょうか。

        *


 悩みに悩んで、いっそのこと占いで決めたいと考えることもあるかもしれません(神がかり的なお告げや占い師の言葉で判断する経営者も実在します)。

情報占いで決めるなら応用コーナー占いは最強の意思決定という方法もあります。興味のある人は参考にしてみてください。

選択には誰しも後悔したくないという思いがあります。とはいえ、占いで決めるのは選択の責任を自分以外に移転することで、心の平穏を得ているだけです。自分の人生は自分自身で責任を持って決断したいものです。

そこで、なるべく後悔のない選択をするためにも、誰もが納得のいく明白な結果が得られる方法があれば完璧です。少なくとも、何らかの数値で表すことができれば、第三者的な視点で冷静に判断できるような気がします。

しかし、数値化が困難な選択なのに、数値で合理的に判断することなんて、できるのでしょうか。

AHP(階層的意思決定法)による意思決定

 結論から言えば、数値化が困難で曖昧な以上、経験と勘に頼るほかありません。経験と勘を信じられないなら別ですが、一定の信頼度があると期待できるなら利用するに越したことはありません。

つまり、経験と勘を取り入れ、かつ、合理的な選択を数値で確認できる意思決定方法があればベストです。ないものねだりのような問いかけですが、これにひとつの答えを用意したのがピッツバーグ大学のサーティ教授です。

その方法はAHP(Analytic Hierarchy Process)と呼ばれ、「意思決定の方法」として心理学と数学を元に1970年代に開発されました。意思決定とは、ある目的を達成するために複数の代替案からベストなものを選び出すことです。

AHPの適用範囲は軍事、ビジネス、公共事業など実に広範囲で、概ね妥当で納得のいく結論を導くことができると言われています。他にも意思決定のモデルに決定木、オペレーションズ・リサーチなどがあります。

2つの対象間で比較を行なうAHPでは、「絶対に重要」、「少し重要」、「ほとんど同じ」といった曖昧な価値判断を経験と勘で行ないます。これらを数値化した後、所定の計算をすることで、合理的な結論を導くのです。

ここでの結論とは複数の代替案(候補)のうち、最も納得のいく代替案を選び出すことです。
AHPは改良版が多く、計算方法や数値化に様々なバリエーションがあります。

AHPを使えば数値化が難しい曖昧な対象でも、無難な選択ができます。また、比較過程において絶対的な基準を必要としません。つまり、比較対象全ての優劣関係を考えなくても、2つの比較対象だけに注目して優劣を判断するため、非常に現実的です。

AHPで究極の選択を

 人は生きていく上で、究極の選択を行なうような場面に何度か出会います。進学先を選ぶ、車の購入、引越の場所、恋愛行動、住宅の購入、保険の加入、方針の決定。会社の退職…。人の数だけ、ライフステージの数だけ悩みがあるものです。

そのような究極の選択の中でも、就職先の会社を選ぶときは特に大きな負担が掛かります。何とか数学的なアプローチでサポートできないものでしょうか。そこで、就職先会社の選定をAHPを使って合理的に行なうことを考えてみます。

AHPによる就職会社の選定

 学校を卒業して希望に満ちての就職、自分の可能性を求めてより高いスキルを持つ会社へ転職…。病気や家庭等の事情による転職…。理由は人それぞれですが、次のステージである就職先がその時の自分の要望にできるだけマッチしていることが理想ですよね。

どの会社が自分にとって好ましいのか、人によって重視したい価値基準は異なります。給与(お金)が最も比重の高い人もいれば、お金よりも自分のスキル向上が大切な人、職場での人間関係を重視する人など、本当に人それぞれです。

就職希望の会社が一社だけなら選択の余地はありませんが、複数あった場合には大いに悩むものです。だからといって、会社のパンフレットやウェブサイトをじっと見つめて、「ままよ」と決めるわけにも行きません。そこで、ここでは以下のようなケースを考えてみることにします。

注釈就職したい会社の候補として会社A、会社B、会社Cの3社があるとします。これらが代替案になりますね。次に会社に対する価値基準を給料(ボーナス込み)、能力(スキルUPの可能性)、人間関係、通勤距離(始業時間)、安定性(会社の継続性)とします。

会社を評価する価値基準としては、残業の有無や福利厚生、転勤の有無など人によって大きく異なります。各自の基準に合わせて計算するといいでしょう。

価値基準のマトリクス

 さて、AHPを使って就職したい会社の候補に優先順位を付けることを目指します。まず、これらの価値基準のうち、人間関係のような項目は入社前には分かりづらいので除きます。

従って、給与、能力(スキルUP)、通勤(始業時間)、安定(継続性)の4つで判断していくことにします。先にAHPでは価値基準のマトリクスを作ります。

       | 給与 能力 通勤 安定
  -----+--------------------
  給与 |
  能力 |
  通勤 |
  安定 |


そして、縦軸、横軸から1つずつ価値基準を取り出して、1対1で比較します。これを一対比較といいます。例えば、給与と能力はどちらが大切かを判断するわけです。2つの対象に関して相対的にどちらが重要かを判断するので、考えやすい面があります。

大切の度合いは、前者(A)は後者(B)に対して「絶対に重要」、「かなり重要」、「重要」、「少し重要」、「同じくらい」の5段階で評価します。重要度の5段階は数値化されていて、以下の表のようになります。

  AはBに対して 数値(A) 数値(B)
  ============================
  絶対に重要     9       1/9
  かなり重要     7       1/7
  重要           5       1/5
  少し重要       3       1/3
  同じくらい     1        1


数値(B)には他の数値設定方法もありますが、ここでは逆数を使います。

まず給与をAとして、能力をBとしてみます。仮に自身の能力向上があまり見込めない会社でも、給与が高いほうが重要だと感じたなら数値の5を選択します。すると給与のポイントは5です。逆に能力のポイントは1/5です。

この作業を給与と通勤、給与と安定で繰り返します。

もし給与が高ければ通勤は苦にならないなら、例えば「少し重要」の3を給与にポイントします。対して通勤は1/3です。給与が多少低くても会社が長く安定して存続するほうがとても大切と思うなら、例えば「絶対に重要」の9を安定にポイントして、1/9を給与にポイントします。

まとめると以下のような表になります。

       | 給与 能力 通勤 安定
  -----+--------------------
  給与 |  --    5    3   1/9
  能力 | 1/5   --    
  通勤 | 1/3        --
  安定 |  9               --


残りの能力×通勤、能力×安定、通勤×安定についても考えます。完成したマトリクス表が次だとしましょう。

       | 給与 能力 通勤 安定
  -----+--------------------
  給与 |  --    5    3   1/9
  能力 | 1/5   --   1/3   5
  通勤 | 1/3    3   --    1
  安定 |  9    1/5   1   --


ここから価値基準のウエイト(重要さ)を計算するのですが、まず上のマトリクス表を数値化します。なお、--の部分は1にします。

   1     5    3   1/9
  1/5    1   1/3   5
  1/3    3    1    1
   9    1/5   1    1


逆ポーランド記法に基づいて、以下のように修正します。

   1     5    3   9 n
  5 n    1   3 n   5
  3 n    3    1    1
   9    5 n   1    1


nは逆数を計算する記号です。このまま、ファイル名の"v.txt"に入力します。ここまで準備できたら、ようやくウエイトの計算です。

「5 n」ではなく、「1 5 /」でも「0.2」でも構いません。

計算過程は少し複雑なのでahpというrpnプログラムを用意します。このrpn式を計算するとウエイトが出てきます。

  >rpn -c ahp <v.txt
  0.280247
  0.187413
  0.246649
  0.285691


これが価値基準から計算したウエイトです。1番目から給与、能力、通勤、安定の価値基準に対するウエイトになります。

どうやら安定と給与に関して、重いウエイトが与えられていることが分かります。一方、最も軽視しているのが能力の価値基準のようです。

この計算結果は後から使いたいので、ファイル名を"v.dat"として確保しておきましょう。

  >rpn -c ahp <v.txt >v.dat


次は…

 後悔のない選択を行なうには何よりも適切な価値基準の選定が大切です。お金よりは遣り甲斐、遣り甲斐よりは安定など、人によって価値基準はまちまちです。例題では就職活動で会社を選ぶ価値基準を給与、能力、通勤、安定の4つにしてみました。

そして、重要度を一対比較で考えることで、価値基準のマトリクスからウェイトを計算しました。計算結果の数値から、頭の中では曖昧だった価値基準のうち、どれが自分にとって重要なのかを知ることができるでしょう。

次は就職候補(代替案)同士で重要性を判定して、ウエイトを計算します。最後に価値基準のウエイトを考慮して、総合ポイントを算出します。それがAHPによる最も後悔の少ない選択になるはずです。

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