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後悔しない意思決定にAHP part2

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代替案のマトリクス

 価値基準マトリクスのウエイト計算が終了したので、次は就職候補となる会社(代替案)に対するウエイトの計算です。価値基準のそれぞれについて、代替案の重要度を考えます。例えば4つある価値基準のうち、価値基準1について代替案1から3をマトリクスで一対比較します。

  価値基準1 --+
              |-- 代替案1
  価値基準2   |
              |-- 代替案2
  価値基準3   |
              |-- 代替案3
  価値基準4


価値基準1が終わったら価値基準2について、同じように重要度を判定します。

  価値基準1
              |-- 代替案1
  価値基準2 --+
              |-- 代替案2
  価値基準3   |
              |-- 代替案3
  価値基準4


同様に価値基準3と4に対しても、それぞれマトリクスを作って重要度判定します。

今回、代替案(候補)となる会社はA、B、Cの3社なので、価値基準の1つである給与から見た3社の優劣を比較します。

  給与 |  A社  B社  C社
  -----+--------------------
   A社 |
   B社 |       
   C社 |


給与の面から考えて、A社はB社に対してかなり重要(とても多い)と考えられるなら、A社に9をポイントします。B社には1/9です。同様にA社とC社を比較して、同じくらいなら1をポイントします。マトリクスに表すと次のとおりです。

  給与 |  A社  B社  C社
  -----+--------------------
   A社 |  --    9    1
   B社 | 1/9      
   C社 |  1


次はB社とC社ですが、重要度を考慮すると次のようになったとします。

  給与 |  A社  B社  C社
  -----+--------------------
   A社 |  --    9    1
   B社 | 1/9   --    5
   C社 |  1    1/5  --


価値基準のマトリクスと同様に逆ポーランド記法で数値化してみます。

    1    9    1
   9 n   1    5
    1   5 n   1


このデータをファイルの"a.txt"に入力します。ウエイト計算はahpプログラムで簡単に計算できます。

  >rpn -c ahp <a.txt
  0.596533
  0.235756
  0.167712


すぐに給与から見た各社のウエイトが計算されました。給与に関して言えば、B社、C社を選ぶよりA社がダントツに良さそうです。他の価値基準ではどうなるでしょう。

自分の経験と勘といった曖昧な感覚で重要度が決められていることに注意してください。A社がB社より5万円多いから、10%多いから等の絶対的な基準ではなく、あくまで感覚で相対的に決めることが肝要です。

この計算結果も後から使うので、以下のようにファイル名を"a.dat"で確保しておきます。

  >rpn -c ahp <a.txt >a.dat


続いて、価値基準の能力、通勤、安定について重要度を考えてみます。それぞれ次のようになったとします。

  能力 |  A社  B社  C社
  -----+--------------------
   A社 |  --    3    5
   B社 | 1/3   --   1/5
   C社 | 1/5    5   --

  通勤 |  A社  B社  C社
  -----+--------------------
   A社 |  --    7   1/3
   B社 | 1/7   --    3
   C社 |  3    1/3  --

  安定 |  A社  B社  C社
  -----+--------------------
   A社 |  --    3   1/9
   B社 | 1/3   --    7
   C社 |  9    1/7  --


能力、通勤、安定の逆ポーランド記法による数値化は以下のとおりです。

   1    3    5
  3 n  1    5 n
  5 n   5    1

   1     7   3 n
  7 n    1    3
   3    3 n   1

   1    3   9 n
  3 n   1    7
   9   7 n   1


それぞれファイル名を"b.txt"、"c.txt"、"d.txt"として入力して保存します。ウエイト計算自体はahpプログラムを使えば簡単ですね。

  >rpn -c ahp <b.txt
  0.636986
  0.104729
  0.258285


計算結果を考察すると、能力に関してはA社を選んだほうがB社の6倍、C社の3倍で圧倒的に良いようです。他の価値基準を見てみましょう。

  >rpn -c ahp <c.txt
  0.430592
  0.244764
  0.324644


通勤の視点から見ると一応の差こそ出ましたが、それほどの違いはありません。強いて言えば、B社は通勤には不利なようです。

  >rpn -c ahp <d.txt
  0.223154
  0.426879
  0.349967


安定性も通勤と同様に差はでましたが、圧倒的な違いはありません。今度はA社、C社に比べてB社の方が有利です。

さあ、段々分からなくなってきましたね。アルバイトのように取り返しが付くような意思決定なら良いのですが、一旦入社すると気に入らないから他の会社にというわけにはいきません。表にまとめてみましょう。

              ウエイト
        順位1  順位2  順位3
        ===================
  給与   A社    B社    C社
  能力   A社    C社    B社
  通勤   A社    C社    B社
  安定   B社    C社    A社


表にまとめると少しスッキリした感じがします。何だかA社でいいような気もしますが、これには価値基準マトリクスで計算したウエイトが反映されていません。果たして、AHPによる最終的な結果はどうなるのでしょうか。

なお、これらの計算結果も後で利用するので、"b.dat"、"c.dat"、"d.dat"に格納しておくことにします。

  >rpn -c ahp <b.txt >b.dat
  >rpn -c ahp <c.txt >c.dat
  >rpn -c ahp <d.txt >d.dat


代替案マトリクスの計算結果をまとめる

 さて、それぞれの価値基準から見た代替案のウエイトを一覧で見てみましょう。

  >paste a.dat b.dat c.dat d.dat
  0.596533        0.636986        0.430592        0.223154
  0.235756        0.104729        0.244764        0.426879
  0.167712        0.258285        0.324644        0.349967


縦軸が代替案(会社)で横軸が価値基準(給与、能力、通勤、安定)と考えてください。これが価値基準毎に見たウエイトです。次に計算の都合上、代替案のウエイトを縦横変換して、ファイルの"z.dat"に確保します。

  >paste a.dat b.dat c.dat d.dat | rpn -c tmat >z.dat


z.datは次のようになっています。

  >type z.dat
  0.596533 0.235756 0.167712
  0.636986 0.104729 0.258285
  0.430592 0.244764 0.324644
  0.223154 0.426879 0.349967


単に縦横が変わっているだけです。今度は縦軸が価値基準で、横軸が代替案になっています。

代替案と価値基準から総合ポイントを割り出す

 この結果に価値基準のウエイトを横結合します。

  >paste z.dat v.dat
  0.596533 0.235756 0.167712      0.280247
  0.636986 0.104729 0.258285      0.187413
  0.430592 0.244764 0.324644      0.246649
  0.223154 0.426879 0.349967      0.285691


単に最後の列に価値基準マトリクスで計算したウエイトが付与されていることが分かりますね。次に4列目のウエイトをそれぞれ1列から3列までの数字に掛け合わせます(スケール変換するrpnプログラムを使用)。

  >paste z.dat v.dat | rpn -c scale
  0.167177 0.0660699 0.0470008
  0.119379 0.0196276 0.048406
  0.106205 0.0603708 0.0800731
  0.0637531 0.121955 0.0999824


最後に縦方向に合計すれば、代替案毎の最終的な計算結果が出てきます。rpn式にまとめると次のように一気に計算できます。

  >paste z.dat v.dat | rpn -c scale | rpn -c rowsum
  0.456514 0.268023 0.275462


ようやく、AHPによる意思決定の計算結果が出てきました。数値は順にA社、B社、C社の総合ポイントになります。

この数値のうちで一番大きな値の代替案を選べば、もっとも後悔の少ない選択をすることになります。今回の例題ではA社を選択すればよいことになります。次点候補はC社ですが、B社とほとんど違わないことが分かります。

価値基準マトリクスのウエイトでは能力に対する比重が少なかったのに、代替案を計算して、共に考慮すると能力重視のA社を選定することになったようです。一軒矛盾しているように思えますが、能力の軽視以上に給与と安定への重視がA社の数値を押し上げたためと考えられます。

番外編:AHPによる意思決定支援の手順(まとめ)

 結論までの計算過程がちょっと複雑だったので、最後にrpn式をまとめておきます。それぞれ、v.txtには価値基準のマトリクスが、a.txtからd.txtには価値基準毎に重要度判定した代替案のマトリクスが格納されているとします。

ファイルがa.txt、b.txt、c.txt、d.txtの4つであることから価値基準が4つあることが分かりますね。つまり、v.txtは4×4のマトリクスになるはずです。
  ===================================
  AHPによる意思決定支援の手順(まとめ)
  ===================================

  ①価値基準マトリクスのウエイト計算
    >rpn -c ahp <v.txt >v.dat

  ②価値基準毎の代替案マトリクスのウエイト計算
    >rpn -c ahp <a.txt >a.dat
    >rpn -c ahp <b.txt >b.dat
    >rpn -c ahp <c.txt >c.dat
    >rpn -c ahp <d.txt >d.dat

  ③代替案のウエイト計算結果をまとめる
    >paste a.dat b.dat c.dat d.dat | rpn -c tmat >z.dat

  ④価値基準のウエイト計算と合わせて計算して、総合ポイントを出す
    >paste z.dat v.dat | rpn -c scale | rpn -c rowsum


この4つの手順を踏むことで、AHPによる意思決定支援が得られます。決定したい事柄や、価値基準、代替案の選定はあなたの自由です。様々な意思決定問題に対しても適用できる方法です。是非、経験と勘をフル活用して合理的な意思決定を行なってください。

最後に、AHPが少しでも後悔のない、素晴らしい選択に導いてくれることを祈ります。

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