ネピア数
2.7182818284590…eなる不思議な数
10を元に計算された対数のことを常用対数といいます。今まで、対数の説明をするときに分かりやすいように「10を元に」と表現してきましたが、正確には10を底とする対数というのが正しい言い方です。
さて、常用対数は航海術や測量、天文学…、その他複雑な計算が必要なところで活用されてきましたが、実は対数には常用対数の他に自然対数というものがあります。これは底が10ではなく、eという不思議な数を底とする対数です。このeという数字は2.7182818284590…と続く無理数で、ネピア(1550~1617)にちなんでネピア数(ネイピア数)ともいいます。
この不思議な数を論文中でeと命名したのはオイラーが最初です(そのためオイラー数とも言われる)。オイラーはeを23桁まで計算しており、その値はe=2.71828182845904523536028でした。
rpnではeを定数として表示することはできませんが、「rpn 1 e」として計算することで、eの値を表示できます(eの1乗を計算)。試してみると以下のとおりです。
2.71828
常用対数 vs 自然対数
常用対数も自然対数も底を10とするかeとするか以外に違いはありません。しかし、共にLogという名称を使うと紛らわしくなります。そこで、常用対数をLog、自然対数をLnとすることが多いようです。具体的に30の常用対数と自然対数をrpnで計算してみましょう(右側に数学表現を示します)。
1.47712
>rpn 30 l ⇒ Ln 30 = 3.4012
3.4012
今度は、30の常用対数と自然対数を取った値を、それぞれ指数として10とeに冪乗してみます。
>rpn 30 j 10 x p ⇒ 10 = 30 ... a)
30
3.4012
>rpn 30 l 1 e x p ⇒ e = 30 ... b)
30
この式は「rpn 30 l e」と簡単に書けます。a)と数式の並びを同じくして説明するために敢えて「x」を使いました。
元の値に戻っているはずです。つまり、以下の数式にあるように、eとLnは逆関数の関係となっています。
Log 30 Ln 30
10 = 30 e = 30
計算でeを求めてみよう
この不思議な数のeを計算で求めてみましょう。以下の公式で、eの近似値を求めることができます(nを大きくすればするほどeの値に近づきます)。
lim (1 + ---)
n→∞ n
それでは、rpnでnを10、20、30にして計算してみましょう(レジスタ機能を使用します)。
2.59374
>rpn 20 #n 1 @n n + @n p
2.6533
>rpn 30 #n 1 @n n + @n p
2.67432
だんだん、eの値に近づいていることが確認できますね。
常用対数とは、「常」に「用」いられる対数です。ちなみに、英語で常用対数は「common logarithm」と言います。実際、10を底とする常用対数は10進数と馴染みが深いですが、複雑な掛け算や割り算が単純な足し算と引き算に置き換えられるので画期的でした。ちなみに対数を計算する時には常用対数表を使うのですが、いつも持ち歩くわけにはいかないので、ポータブルな対数計算尺というものが発明されました。この商品は大ヒットしてとてもよく使われていました。しかし「ある発明品」が市場に出てからは商品価値がゼロになり、使っている人はいなくなりました。その発明品こそが「電卓」です。
『今回の問題』………………………………………………………………………
以下を逆ポーランド記法式に変換せよ。
(1) 計算結果が3.14となるeの冪乗値を求める式。
(2) 3.14の自乗を自然対数の計算で求める式((1)の冪乗値を利用のこと)。
(3) eの近似値公式を使って、nを1000000(百万)の時のeを求める式。
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