休日の東京に大雪が降る謎
温暖化とは裏腹に、2014年2月8日に東京都心において積雪27cmが記録されました。雪国と異なり、東京の雪は降っても高々数cmのことが多いのですが、20年ぶりの大雪で交通機関の乱れや事故が相次ぐことになりました。流石に積雪量が27cmともなると立派な雪国の積雪量です(豪雪地帯を除けば)。
同日は長野県松本市でも48cmの積雪量でした。ちなみに東京都心の大雪注意報は降雪5cmが基準ですが、豪雪地帯である新潟県の注意報の基準は降雪15cmから30cmです。大雪警報ともなると30cmから60cmにもなります。
まとまった雪はスタッドレスタイヤや雪かき用のスコップなどの準備がないと、日常生活を営むことができなくなります。消雪装置や除雪用の水路等がない都会では溜まった雪で歩くこともままなりませんし、転倒による怪我は思いの他、酷くなるケースもあって馬鹿にできないものです。
雪国の人は雪道を歩くのが上手というわけではありません。もちろん、歩くときに足の裏全体に体重を掛けるなど、雪道歩行に多少のテクニックはありますが、実は履いている靴底の溝が深かったり、水はけの良い路面等で助けられています。雪国育ちの人でも都会の道に降り積もった雪ではよく滑ります。
さて、27cmの積雪量を受けて「東京の大雪は、なぜ土日と祝日に多いのか?」という話題が挙がりました。何でも1980年代はそんなことがなかったのに、2000年になってからは5cm以上の積雪は必ず土日だというのです。
神様が週末や休日を狙って雪を降らすなんてことはないでしょうから、天候と七曜に関連性があるとは思えません。そこで、気象庁のデータを使って本当かどうか統計的に確認してみましょう。
まずは東京に降る雪はどのようなものなのか見てみましょう。ポイントはいつ、どれだけ降っているのかです。
過去四半世紀(25年)の積雪量グラフ
過去25年間の積雪量をグラフ化します。以下のようにファイルの"snow.txt"に日付と積雪量(cm)がペアで記録されているものとします(1990年から2014年までの25年間)。
19900101 0
19900102 0
19900103 0
:
(中略)
:
20140329 0
20140330 0
20140331 0
単純にデータの最初の日から最後の日までを横軸に積雪量をプロットしていきます。なお、積雪量の最大は30cmにしてあります。
^y 30
| *
| *
| *
| *
|
| * *
| *
| *
* * *
| * * * *
* * * * * * *
| * * * * *
* * * * * * * * x
|o * * * ** * * * ** * * * * * * 9*00
****************************************************************->
1990 2000 2010 2014
当然、春・夏・秋には雪は降りませんから、歯抜けの櫛のようなグラフになります。積雪量が縦に伸びていない期間は冬季以外です。ちなみに東京で積雪が確認された月は以下のように12月から3月までの4ヶ月です。
>rpn -c freq <tmp
1 31
2 34
12 3
3 5
グラフを俯瞰してみるに、温暖化が進んでいるという割には積雪量は減っていません。2010年くらいまでは順調に下降していたのですが、それ以降は増え始めて、2014年で過去25年間で最大の積雪量となっています。
温暖化に関する記事が科学アラカルトの地球温暖化と太陽の黒点数にあります。黒点数から温暖化の真実について検証しています。興味のある人は閲覧ください。
東京の積雪量の基本統計量
ここで、基本統計量を計算してみましょう。ただ、積雪のない日も(冬季でないシーズン)全部処理しているので、平均以降はあまり意味がありません。
デ ー タ 8856
最 小 値 0
最 大 値 27
範 囲 27
合 計 値(Σ) 468
平 均 値(μ) 0.0528455
分 散 値(σ2) 0.689168
標準偏差(σ) 0.830161
分 散 値(s2) 0.689245
標準偏差(s) 0.830208
歪度(a3≒0) 22.2293
尖度(a4≒3) 581.195
変動係数(ν) 15.7101
流石に最大でも30cmは積もらないようですね。最小は当然0cmで、最大は2014年の27cmです。次に積雪のあった日だけを抜き出して基本統計量を出してみます。
デ ー タ 73
最 小 値 1
最 大 値 27
範 囲 26
合 計 値(Σ) 468
平 均 値(μ) 6.41096
分 散 値(σ2) 42.8448
標準偏差(σ) 6.54559
分 散 値(s2) 43.4399
標準偏差(s) 6.59089
歪度(a3≒0) 1.67097
尖度(a4≒3) 5.1988
変動係数(ν) 1.02807
平均すると6cmの積雪ですね。体感的に合っています。標準偏差は6cm程度なので、無理やりガウス分布と考えると7割が12cmから0cmの範囲に入ります。
あくまで積雪量なので雪が解けないと当然降り積もります。従って、特定の日の積雪量は従属事象の可能性があります。例えるならサイコロの1の目が「積雪あり」で2から6が「積雪なし」とすると、一旦1の目が出ると次も1の目が出やすいということです。
ついでに幹葉表示で度数分布を出してみましょう。積雪量の分布がより明確に分かります。
0 | 1111111111111122222222222222333334444444455556677788888999
1 | 0012245678
2 | 13677
一目でほとんどが10cm未満であることが分かります(58/68で85%)。5cm~9cm積もったのは17回(日)。10cm~19cm積もったのは10回(日)、20cm以上積もったことは5回(日)あります。つまり、東京での大雪注意報レベル以上の積雪は25年間で全部で32回(日)あったようです。
異常な積雪量の年と雪の積もらない年
では、異常気象と考えられる積雪量はどれくらいでしょうか。外れ値を計算してみましょう。
21
23
26
27
27
過去25年間で、20cm超の積雪を異常値と見なすことができます。分布の仮定は適当でも、当たらずも遠からずで体感的に合っている気はします。ちなみに2014年2月の積雪27cmを除く、積雪21cm、23cmは1994年(平成6年)2月のこと、26cm,27cmは2004年(平成26年)2月のことになります。
ニュースで報道された2014年の27cmの積雪は確かに20年ぶりの出来事でした。では、逆に冬のシーズンに積雪量が0cmだった年は何回あるのでしょうか。
>rpn _, 100 / i -fd <tmp | rpn -c uniq -fd
199001
199002
199112
:
(中略)
:
201202
201301
201402
目視でデータを確認すると1999年の冬と2003年の冬は積雪量0cmだったようで、25年で2年だけです。すると、異常なほどの大雪は20年に1度くらい、雪が積もらない年は10に1度くらい発生するという計算になりますね。
次は…
東京の積雪事情について、簡単な統計計算で概観してみました。温暖化の影響は2014年の大雪でグラフからは読み取りづらくなったようです。今後の積雪量次第では温暖化の真偽が分かるかもしれません。
さて、統計上は大雪は20年に1度の頻度なので、雪が降り積もらない年よりは珍しい部類に入ります。やはり、大雪が東京に降るのは希なようです。それに加えて、週末にしか降らないとなると何か恣意的なものがないとあり得ないように思えます。
そこで次に、曜日毎に積雪量に違いがあるかを調べてみます。果たして、本当に雪が降り積もるのは週末限定のイベントなのでしょうか。
rpnプログラムを実行するには、rpn試用版かrpn標準版が必要です(バージョンの違いはこちら)。
rownumはカンタン分析パッケージに同梱されています。nlookup, uniqはユーティリティーパッケージに同梱されています。freq, statinfo, stemleaf, outlierはrpnマイスターパッケージに同梱されています。xypとnpdはrpnの姉妹ソフトウェアです。詳しくはプロダクトを参照ください。