勾配と角度から激坂を探る
急な坂道で○○%みたいな交通標識をたまに見かけます。自動車では余程の%でないと問題ありませんが、自転車の場合は10%を越えるときつくなってきます。15%の坂ともなると下るのもスピードがついて大変です。自転車にはエンジンブレーキがありませんし…。
.a . .
=_ ~~~~~~~~~~ . .
o/o ~~~~~~~~ . . c(nメートル) b=100mのとき
~~~~~~~~ ○○%の坂 . . . . . 勾配はn%
~~~~~~~~ b
さて、あの標識の%の単位なのですが、学校で習う角度とは違います。例えば、勾配10%は100m進むうちに10m登る坂のことになります。馴染みのある角度に直すには変換公式があって、slopeを勾配(%)、degを角度(°)とすると、以下の公式になります。
勾配10%のとき、100m進むうちにというのは実際に進んでいる距離ではなく水平方向に100mです。登る高さは道に垂直方向ではなく、鉛直方向に10mです。例えば、高度計と自動車の距離メーターからは正確な勾配は出ません。勾配10%の場合、進んだ距離100mでも実際に走った距離は√(100^2+10^2)なので「rpn 100 . * 10 . * + r」で100.5mです。
水平方向の移動距離(b)と鉛直方向の獲得標高(c)から勾配を求めるには、b:c=100:xなのでx=100c/bになります。つまり、高さを100倍して距離で割ればよいので、高さ20mを登るのに距離300mを要した場合は「rpn 20 100 * 300 /」で勾配は6.7%です。「echo 20 300 | rpn #b #c @c 100 * @b /」の方が汎用性が高いですね。
勾配から角度への変換
slope 180deg = atan ----- * ---
100 π
角度から勾配への変換
deg * πslope = tan -------- * 100
180
rpnで計算すると勾配が25%の場合は、
14.0434
となり、約14°の角度。逆に角度が14°の場合は、
24.9196
約25%の勾配になります。
登れる勾配の限界
どれくらいの勾配からきつい坂になっていくのでしょうか。もちろん、自動車、電車、自転車、徒歩での違いによって同じ勾配でも楽に感じたり、きつくなったりしますが、登坂力は長距離なら徒歩>自動車>自転車>電車とみていいでしょう。短距離なら徒歩>自転車>自動車>電車です。
ちなみに激坂の区切りは勾配13%です。この勾配あたりから、道路にはドーナツのような窪みが刻まれ、道路もアスファルトでなくコンクリートになります(全部ではないようですが)。鉄道の場合、最大勾配は3.5%と決められていますが、日本一勾配のある登山鉄道は8%(箱根登山鉄道)です。鉄のレールを鉄の車輪で登るのですから、容易に滑ることが予想できます。特別な仕様でないと5%越えは無理です。
道路構造令によると道路の最大勾配は最大12%です。つまり、13%台からの勾配は全て例外だということです。実際、雪道では13%くらいから、後輪駆動の車は条件によって滑り始める気がします。
上記の例にあるような、25%にもなると長距離を登り続けることは人力の自転車ではまず難しいことになります。登坂力のある自動車にしても限界が設定してあり、32%が登坂限界と言われます。角度にして17.7°ですね。
30%を越える激坂に関しては、電動自転車(ママチャリ)が35%の坂を登っている映像があります。かなりの登坂力です。国道の最大値は37%(暗峠)ですが、人力の自転車で登った人がいるので37%は可能のようです。ただし、暗峠の37%は登り側からすると反対車線の内側なので、交通ルールに従って左側を走る分には20%台時なのだそうです。加えて、37%の部分はだいたい8m程度しかないので、35%・30m(自動車の登坂試験場)に比べれば37%部分に限っては楽な部類になります。ちなみに、日本で登れない坂はないと言われるカブの1速で登坂は可能です。
35%は人力の自転車が登れる限度と言われます。物理的な理論値は80%だそうですが、空気の抵抗なし、熱への変換なし、全エネルギーを摩擦力に変えて登坂に使えればといったあり得ない条件なので、現実には35%程度が関の山でしょう。ただし、45%の坂を登った映像もあるので、知る限りでは人力での自転車の登坂最大記録は45%と思います。都市伝説として、人が手をつかずに登れるならマウンテンバイクでも登れるというものがあります。
激坂と名高い坂に江島大橋のべた踏み坂がありますが、これは6%程度の坂で全く大したことはありません。望遠レンズで撮ったために圧縮効果で凄い坂に見えるだけです。自転車競技でも2桁からがきつい坂の認識なので、6%は普通の橋梁と大差ありません。もちろん、12%の橋梁もありますが、大体は1桁台です。ちなみに、今では少なくなりましたが、歩道橋の勾配は50%です。古い階段では88%なんてのもあります。徒歩での登坂力は凄まじいのです。
自動車(ランドクルーザー)の場合は、金属の上に水を流した滑りやすい状態で、59%の坂を登った映像があります。条件が良ければ、もっと勾配のきつい坂も登れる可能性があります。
暗算で勾配と角度の変換
最後に、rpnを使わなくても勾配・角度変換できるような簡易計算を考えてみます。まずは、勾配が1%から50%までの角度に対応する角度を計算します。
>rpn @n 1 + #n @n 100 / :atan -r 50 | rpn 180 3.14 / * >tmp2
それぞれをファイルに入れて、勾配と角度の単回帰式を求めてみます。
y=0.533531x+0.447406
すると、勾配を半分にして0.5を加えると大体の角度になることが分かりま
す。逆に角度から勾配を求める単回帰式はtmp1とtmp2を逆にして計算すれば
出てきます。
y=1.87261x-0.814759
角度を2倍して1を引くと大体の勾配ですね。すごく、大雑把に定義すると、
角度 * 2 ≒ 勾配
暗算するのならこんな感じで十分でしょう。
- 10%の勾配なら半分にして、大体5°の坂。正確には5.7°。
- 10°の坂は2倍して、大体20%の勾配の坂。正確には17.6%。
多少の誤差はあるものの、日常でも使えるでしょう。勾配よりも角度は小さいとさえ、覚えておけば、勾配が出たら半分に、角度が出たら倍にすればいいだけです。
坂の度合いを斜度という人もいますが、勾配と斜度は同じ単位です。100メートル進むうちにnメートル登るならn%の斜度、n%の勾配です。なお、勾配の30%を0.30と読み替えると自動車の登坂能力になります。これは最大積載して1km進む間に300m登れる能力のことです。最低1kmは進まないと登坂能力とは言わせない感じですね。
rpnプログラムを実行するには、rpn試用版かrpn標準版が必要です(バージョンの違いはこちら)。
pasteは講座サポートにあります。atanは提供プログラムにあります。exprはビジネス統計(単回帰編)に同梱されています。xypとnpdはrpnの姉妹ソフトウェアです。詳しくはプロダクトを参照ください。